扇子は、日本で考案されて、中国やヨーロッパに広まったものと
考えられています。
扇子がいつごろ作られたというと、確かな資料がなくはっきりとは
していませんが、藤原京(694~710年)や平城京(710~787年)の
貴跡から扇子が出土していることなどから、扇子は奈良時代には存在
していたと思われます。
扇子の最初の形は桧扇(ひおうぎ)と呼ばれる扇子でした。
桧扇とは、桧の薄板20~30枚の一方を、白絹糸で綴じ、もう一方を
糸で連ねて開閉できるようにした扇子です。
桧扇は高貴な人々の装束には欠かせない装飾品として、最初は男性が
無地の桧扇を、お持ちになる習わしとなっていました。
また桧扇は、公式行事の式次第を書いて、備忘の道具などにも使われて
いたといわれています。
また、後に女性も女性用の桧扇を携帯するようになりました。
女性用は装飾のために用いていたようです。
その為、男性の桧扇と違って、美しい絵や彩色を施すのが一般的でした。
桧扇の発生からそれほど遅れることなく、竹や木で作られた扇子の骨に
紙を貼った紙扇子が作られるようになりました。
広げたようすが蝙蝠(コウモリ)に似ていることから蝙蝠(かわほり)扇と
よばれるようになったといいます。
そして、蝙蝠扇も桧扇と同様に扇面に金箔や銀箔を用いたり彩色を施したり、
詩歌や絵を描いたものが生まれてきました。
また、南北朝時代(1333~1392年)には、中国から両面に紙を貼った
唐扇(からおうぎ)とよばれる扇が逆輸入されるようになりました。
この唐扇の影響により、日本でも、さまざまな種類の扇子が作られるように
なりました。
また、日本発の扇子が中国へ伝わり唐扇となり、はるばるシルクロードをへて
16世紀にはヨーロッパに伝えられ、ポルトガル、スペイン、フランスへと普及
してゆき、とりわけフランスでは、上流階級の貴婦人に好まれて、扇骨には象牙、
扇面には贅沢な絹が使われたフランス扇が多く作られるようになりました。
17世紀のパリには約150軒もの扇店があったと伝えられています。
この布貼りのスタイルが、日本に逆輸入されて今日の布貼扇子(絹扇子(きぬせんす))
として、扇の一つのジャンルを形づくっています。